今回ご紹介する作品は、『陰陽師』です。
原作は夢枕獏さんの同名の小説。陰陽師の漫画化は岡野玲子さん以外ありえないと夢枕さんが思っていたところ、岡野さんも同作品の漫画化を希望していた、「両思い」で始まった作品です。
舞台は「闇」が闇としてあった平安時代。陰陽師・安倍晴明と、その友人の源博雅(みなもとのひろまさ)を中心に、鬼や怨霊が跋扈する世界が描かれます。
初期には原作の比較的忠実なコミカライズもありますが、だんだんオリジナルの話になっていきます。陰陽道について深く掘り下げられ、果ては古代エジプトにまで飛びます。
清明と同居する少女(後に妻に)の存在やカタカナ語を多用する清明など、原作を知る方は戸惑うかもしれません。ですが晴明と博雅のコンビは健在。その上で原作とは一味違った世界が楽しめる作品になっています。
基本情報
作品名:『陰陽師』
作者:岡野玲子 原作:夢枕獏
発表:1993年~2005年
掲載誌:『コミックバーガー』『コミックバーズ』『月刊メロディ』
単行本:全13巻(JETS COMICS(白泉社))
舞台、作品傾向
時代:平安時代
シリアス・ギャグ度:シリアス寄り
おすすめポイント
- 鬼の存在する、雅で恐ろしく不思議な世界を、繊細な画風で味わえる。
- 晴明と博雅の、身分差を感じさせない友人同士のやりとりを楽しめる。
あらすじ
時は平安時代。安倍晴明という少年がいた。
師匠は賀茂忠行(かものただゆき)。師に同行していた晴明は、異形のものたちが近づいていることを師に知らせる。現れたのは怨霊・菅原道真をはじめとする鬼たち。気づいた晴明のおかげで、一行は命拾いしたのだった。
時は流れて忠行の死後。安倍晴明は内裏の東北・艮(うしとら)に屋敷を構えていた。鬼門の方向である。狐の子と噂され、式神を操る陰陽師として知られる晴明。周囲の人間は、晴明の力に興味津々であった。
一方、源博雅は、夜の都を歩いていた。博雅には憂うことがあった。五日前、天皇が大切にしていた琵琶・玄象(げんじょう)が盗まれてしまったのだ。すると、その玄象の音色が聞こえてくる。音を追ってたどり着いたのは、羅城門であった。中に入り、玄象を盗んだのは鬼であると判断する博雅。となればこれは晴明の領分である。
博雅は晴明の屋敷を訪ねた。人ではないものが迎え、世話してくれる不思議な空間。酒を酌み交わしながら、晴明は「呪(しゅ)」について話し出す。この世で一番短い呪とは「名」だという晴明。博雅は訳がわからない。本題に入れと促す晴明に、博雅は盗まれた玄象について相談する。
そして晴明・博雅らは、異国の琵琶の音が響く、夜の羅城門を訪れるのだった。
登場人物紹介
安倍晴明
陰陽師。都の鬼門の方向に居を構える。式神を操り、鬼など異形の者の世界の理に詳しい。
飄々とした性格で、博雅と酒を飲みながら話をするのを好む。
博雅がもってくる怪異を、その知識と能力で解決していく。
源博雅
晴明の友人。管弦に優れる。実は身分が高く、醍醐天皇の孫で、時の帝・村上天皇の年上の甥。
実直な性格で、晴明が得意とする呪や鬼の世界には疎い。
よく晴明にからかわれながらも、その人柄を好かれている。
真葛(まくず)
晴明の屋敷で暮らす少女。鬼が見える。晴明にも客にも鬼にも物怖じしない性格。
菅公(かんこう)
菅原道真。平安の都を脅かす怨霊。藤原時平(ふじわらのときひら)に陥れられて左遷され、太宰府で憤死した。
まとめ
『陰陽師』を紹介しました。
平安時代の闇と鬼、性格も身分も違う二人の友誼、そして陰陽道の深淵。原作の魅力と漫画版ならではの解釈と、その両方が楽しめる作品です。
原作小説はこちら
↓クリックして頂けると嬉しいです。

にほんブログ村