今回ご紹介する作品は、『応天の門』です。
主役の二人は、現代では日本三大怨霊の一人として知られる菅原道真(すがわらのみちざね)と、伊勢物語のモデルとして知られる在原業平(ありわらのなりひら)。
本作の菅原道真はまだ学生。そして迷信なんか信じない性格です。
在原業平は壮年で、都の平安を守っています。そして安定の女好き。
都で起きる不可思議な事件に、彼らが挑みます。藤原氏を中心とする、宮中の権力闘争にも注目です。
基本情報
作者:灰原薬
単行本:既刊19巻
発表:2013年~
掲載誌:月刊コミック@バンチ→月刊コミックバンチ→コミックバンチKai
舞台、作品傾向
時代:平安時代
シリアス・ギャグ度:中間
おすすめポイント
- 鬼や怨霊が信じられている時代の雰囲気を味わいつつ、現実的な謎解きが楽しめる。
- まだ子供っぽさが残る菅原道真と、大人の世界を知る在原業平が、それぞれ魅力的。
あらすじ
在原業平は夫のいる女性と同衾していた。
女性は、鬼が夜な夜な女を攫うという噂を心配する。藤原親嗣(ちかつぐ)の屋敷の女官が立て続けに行方不明になっているという。
女性の屋敷から帰る途中、業平は門の上に人影を見る。
賊か鬼かと問う業平に、小鬼のような人影は書を読んでいるだけだと言い、検非違使と会わずに帰れる道を教えてくれた。
内裏に上がった業平は、人が消える事件の解決を帝に約束する。
そこに牽制を入れる人物がいた。名は藤原良房(よしふさ)。良房の姪・高子と業平は、昔駆け落ち騒ぎを起こしていた。
一方、大学寮では青年が書を借りに来ていた。
そこに友人の紀長谷雄(きのはせお)がやってくる。何やら頼み事がある長谷雄だが、そこに検非違使(けびいし)がやってきて長谷雄を捕らえるという。女官攫いの嫌疑をかけられたのだ。
騒ぎを聞きつけてやってきた業平。長谷雄はそんなことができる男ではないと、検非違使と言い合いになる。
そこに先ほどの青年が、騒がれては邪魔だと文句を言いに来た。
その声から、業平は青年が門の上にいた人物だと気づく。
小鬼のような青年は大学寮の文章生(もんじょうしょう)だったのだ。
昨夜自分がどこから来たかなぜわかったのかと問う業平に、青年は優れた観察眼と博識を示す。
青年は助けを求める長谷雄に「菅三(かんさん)殿」と呼ばれた。彼は菅原是善(これよし)の三男、名を菅原道真というのだった。
登場人物紹介
菅原道真(すがわらのみちざね)
学者の家の息子。
大学寮の優秀な学生である文章生(もんじょうしょう)。
人付き合いを嫌い、家で書物を読むことを好む。
鬼や怨霊の類は信じていない。
在原業平(ありわらのなりひら)
平城帝の血を引く公達(きんだち)。権少将(ごんのしょうしょう)。
優れた文化人として、また女性関係が豊富なことで知られる。
よく道真に厄介ごとの相談に来るようになる。
まとめ
『応天の門』を紹介しました。
年齢も身分も性格も違う二人の掛け合いと謎解き。宮中の貴族たちの人間模様。平安時代初期を舞台に、魅力的な物語が楽しめます。